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最後の1%で差がつく

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芸術に正解などないけれど、やはりどこか引寄せられる作品にはワケがあるような気がします。
12月5日日曜日。今日は朝から新国立美術館に来ています。お天気にも恵まれ、館内はすごい人。中でもゴッホ展は、入場制限されていて長蛇の列を作っていました。
私はというと、ゴッホ展ではなくお隣の日展を見に来ました。洋画から日本画、工芸品など、全国から選ばれた素晴らしい作品を鑑賞してきました。海外の作風とはまた違い、日本人ならではの感性というものを直接肌で感じられた気がします。
よくお客さまから、「配色がうまくできない・・・・・・」というご相談をうけますが、どの色とどの色とを並べたらキレイにまとまるかというものは、突然頭で考えようと思っても容易に出来るものではありません。
だからこそ日頃から、様々な色の組合せを目にしたり、色んな素材に触れて温もりから色みを感じとったり、食事をする際に目を閉じて香りだけで色を想像してみたりと、色んな場所で五感を使うことを習慣化させることが大切なのです。
そういった意味でも、人がつくった芸術を目にしたり耳にすることはとても貴重な時間だったりします。
依頼の多い仕事のひとつに、カラー監修の仕事があります。バランスよく色選びができているかをみていくものです。商品の開発は長けていても、それを彩る「色」は同じくらい長けているのか?というのと、まだまだ難しいのが現状です。恐らくどの業界の方であっても、色選びについては毎回頭を抱えているのではないでしょうか。
色の仕事一筋で今日までコツコツとやってきましたが、1日たりとも色を甘くみたことはありません。自分の力がつけばつくほど、色への思いは深まり、その重要性を感じています。
私はもともと自分に似合うものってなんだろう、この街に合う建物はなんだろう、このテーブルにマッチする食器や料理はなんだろう、といった風に、日常の中から浮かびあがった『?』を辿っていったら、色にたどり着き、この仕事に携わっているわけですが、日常に溢れている身近なものであるからこそ、もっともっと大勢の方々に、特に商品を作っている側の人たちには、色がもたらすプラス面マイナス面についてより興味をもっていただけたらなと思っています。
毎日のファッションであっても、食卓に並べられた料理であっても、ちょっとしたアンバランスさに、どこかココチ悪さを感じてしまったことってあるのではないでしょうか。
色だけではありません。素材や形、大きさなどもそうですね。形は合っているのに素材が違うだけでお洋服なども?になることってありますよね?
世の中で多くの人に共感をもたれたり、愛されたりするモノというのは、やはりどこかにバランスのよさを感じるからです。そしてこのバランスのよさを生み出している正体こそ、色だったりするのです。
小さなところまで手を抜かない、最後の1%まで力を注げているかどうかが、自ずと周囲からの評価となってかえってくる、そんな風に思います。
芸術への評価も、もちろん好みというものもありますが、この最後の1%の情熱が大きく影響を及ぼしているのではないかな~って思うときがあります。
自分が生み出した芸術を妥協することなく完成させた作品というのは、やはりパッと見ただけで違ってみえます。中でも主役である絵と、それを引きたてる額縁とのバランスまで考えられているものには、ついつい引き込まれていきます。
絵に使われている色だったり材料だったりを考えつつ、それをよりステキに見せるために、額に敢えて色でラインをつけてみたり、絵の色合いをより引きたてるために、敢えてコントラストを作り上げるような色を額に選んだり。またゴールドやシルバーといった額縁に多い色も、絵とのバランスに合わせて別の色を織り交ぜてちょっと違った風合いにしてみたり・・・・・・。同じトーンの中に1つだけ違ったトーンの色がくれば当然そこだけ浮き出て見えます。その浮き出た色と額縁とのトーンを合わせることで、全体のバランスを上手にとっているという作品も見かけました。
額も絵の一部となっているものと、額は額、絵は絵となっているものとではまるで違います。調和されているか、されてないか一目瞭然です。
社長がどんなに頑張っても、社員が頑張らなければ会社はよくなっていきません。これに少し似ています。絵がどんなによくても、それを守る額だけが目だっても駄目だし、沈んでしまってもダメ。絵と額と両方がハーモニーを奏でてこそ素晴らしい作品が生まれるのかなと思います。
私にとって、絵を描くということは、IT分野と同じくらいに苦手なことですが、なぜか私の母は絵のプロのようです(笑)。母の絵もありがたいことに日展に入選させていただけたようで、こちらもしっかり鑑賞してきました。
もともと音楽のプロだったはずなのに、気づいたらベレー帽の似合う絵のひとになっている母。煌びやかなドレスをまとってオペラを歌っていたスマートな姿は今何処へ?(笑)
そんな母から直接何かを学ぶということは殆どなかった私ですが、強いてあげるとしたら「スタートに遅いはない!」ということを間接的にも学ばせてもらえたかな?と思っています。母はアラフォーから絵をスタート。もちろんあれから20年以上たちますが、焦ることなく、着々と力をつけていって今に至ります。本当にすごい努力家で、尊敬しています。
そんな母も、ラスト1%も力を注いでいます。
それにしても神様って意地悪だな~。私にも絵の才能をわけて欲しかったです・・・・・(笑)。