0

見えないものが見えてくる

今日は晴れてとても気持ちがいい。青空には雲ひとつなく、電球の力を借りることなく過ごせるのだから本当にありがたいこと。
普段なら、無駄にきらめくネオンにうんざりしているはずなのに、ここまで色がない世界に包まれるのは、とても心細く、とても不安にさせられます。震災から1週間。早いようですが、私にはとてもとても長く感じてなりません。
今日は土曜日というとことでひと段落していますが、この一週間、計画停電によって明かりを失っていた地域も少なくないでしょう。昨夜たまたまメールをいれた親友も、ちょうど停電真っ最中でした。「反省するにはいい時間」と返事がありましたが、私も同じ気持ちでした。同時刻に私も暗闇に身を置いていたのですが、身も心もクールダウンでき、とても貴重な時間を過ごせたように思います。
これからのこと、これまでのこと。今日のこと、昨日のこと。仕事のこと、家族のこと。お客さまのこと、生徒さんのこと。友達のこと、親友のこと。もう挙げ出したらきりがないほど、色んなことが頭をよぎりました。自分では大丈夫だろうと思っていたことが、最も身近なところで出来ていなかったことにハッと気づき、深く深く反省してみたり、改めて感謝の言葉を述べたくなったり・・・・・・。
忙しいときや余裕のないとき、人は大事なものが見えにくくなります。始めは大事だとわかっていたはずなのに、つい目新しいものに夢中になってみたり、自分のことで精一杯になってしまったり、しまいには見て見ぬふりをしてしまったり、後回しにしてしまったり・・・・・・。
でも人って、本当はどこかでわかっていたりするんですよね。余裕がないときこそ、大事なものが何かを改めて確認したり、より大事にしたりしなくてはいけないということを。
当たり前だと思っていることが当たり前でなくなったとき、いつも見守ってくれていた人が、二度と戻ってこなかったとしたら、どれだけ悲しいか、どれだけ寂しいかを考えてもらえたら嬉しいです。
今回の震災で、みなさんも辛い思いをたくさんして、いろんなことを心に映し出したかと思います。もしこの世に全く光がなくなってしまったとき、最後に頼りにできるのは、やはり人の心の灯火だけなのかなって、そう思うのです。
大地震のあと、通信が乱れる中、みなさんの元に安否を確認する連絡が入ったという方はいらっしゃいますか?その相手は、いつもやりとりしている同僚かもしれませんし、家族かもしれません。恋人かもしれません、友人かもしれません。
正直相手がどういった人であろうと構いません。大事なのは、連絡をもらったとき、みなさんはどんな気持ちだったか?ということを思い出してもらいたいのです。
ちょっとした連絡は、何気ない毎日ではごくごく当たり前のことかもしれません。でもこうした時は当たり前を当たり前ととってはいけないのです。ふと受信されたメールに心が安らいだという人はいませんでしたか?
さすがに迷惑って思った人はいないと思います。もしいたとしたら、それは人として少し反省しなくてはいけないことかもしれません。なぜなら、とても残念なことですから。
私は、今回の震災を通して、多くの人たちに大事に思ってもらっていると実感しました。と同時に周りの人たちのことをもっと大事に思っていきたいと思いましたし、また思ってもらえるような素晴らしい人間でありたいとも思いました。家族だけとは限りません。友人かもしれませんし、クライアントさんかもしれません。もしかしたらご近所さんかもしれません。
自分も大変な中、相手を真っ先に思い浮かべ気遣えるということは、そう簡単にできることではありません。
みなさんも、今一度、自分の身の回りの方々を1人1人思い浮かべてみてください。何か改めて見えてくるものがあるのではないでしょうか。
私には親友と呼べる友人が数名います。出会った時期は色々です。まだ2年くらいという人もいれば、もうかれこれ20年以上も付き合いのある友人もいます。
正直、出会った時期や出会ったシチュエーションなどよく覚えていませんし、あまり関係のないことなのかもしれません。最も大事なことは、その相手と出会った日から今日まで、絆と呼べるほどの深い信頼関係を結び続けられているか?ということに限ると思っています。
ただ結ぶではありません。結び続けられているか、継続できているかどうかということが大事なのです。
継続するって本当に難しいことですよね。仕事でも、趣味でも、習い事でも、筋トレでも。1つのことをしっかりやり続けることというのがどれだけ難しいかは、人間関係の複雑さを学べばよく理解できることです。
一度は経験があると思いますが、出会ってすぐ意気投合して、「私たち(僕たち)気が合うね~仲良し♪」といった具合に一気に盛り上がっては、数ヶ月もしないうちにじわじわと関係が消滅していくという経験をされたことがある方も少なくはないと思います。もちろん私も経験済みです。
世の中には素敵な方が大勢いいらっしゃいます。でもそんな中、本当に自分と深く付き合える人というのは、ごくごく僅かだなってつくづく思います。自分のことをすべて受け入れ、かつ信じてくれる人なんて、そう滅多に出会えるものではありません。
神様ってすごいなって思います。人生において人と人とが深く知り合える時間というのは限られているということを、それはそれはよくわかっていらっしゃる。
その人に必要な数のキーマンを送り込む。そんな気がします。もしかしたら1人かもしれないし、10人いるかもしれません。またキーマンであることに気づくか気づかないかはその人次第という難題をつきつけているのも神様らしいです。
キーとなる人物は、すでにみなさんの側にいるかもしれませんし、まだ現われていないかもしれません。それはわかりません。でも気づいた時にはもういなかったなんてことにだけはならないでもらいたい、私はそう思います。
そうなったら、悔やんでも悔やみきれませんから・・・・・・。生きている間にわかりあえることが大事なんですよ。信頼関係って。
本物の信頼関係というのに利害関係など全く必要ありません。無条件に相手を大切に思えるか、これが全てですから。もしみなさんの仕事に、肩書きに惚れこんでいるとしたら、それは少し違うかもしれません。全てを取り払った状態で愛せるか否かなのです。
また人というのは感情のある生き物です。何がどう変化するかわかりません。なので、自動車免許と同じで、一度とったからもう大丈夫!というわけにはいかないということも覚えておいてください。
この人なら大丈夫、そう思っている人に限って、何かSOSを出しているかもしれませんし、みなさんの連絡を待っているかもしれません。
家族がいるから大丈夫。しっかりしているから大丈夫という具合にみなさん独自の思い込みで全てを解決させている人がいたとしたら、それはちょっと間違っているかもしれません。他の人には言えないこと、しっかりしているからこそ見せられないこと、人にはたくさんあります。もしかしたらみなさんにだけは、唯一心を開けるという人もいるかもしれません。
地震の2日前に、20年以上も付き合いのある大親友から半年ぶりくらいに電話がありました。ちょうど仕事で外出していた私は電話の着信履歴を見て、すぐに「あ!」と思いました。それは、忙しさのあまり大事な大事な友達に携帯を変えたことを連絡していなかったからです。彼女は、私の半世紀を全て?知っている(笑)大親友ですから、きっと今大変なんだろうということも、どこかでわかってくれているって甘えていました。案の定、どんな状況だったかも彼女は察してくれていました。
でも、「すごく心配したよ。本当何かあったんじゃないかってドキドキしたんだから」って言われたとき、心から自分の不甲斐なさに反省し、申し訳ないって思いました。自分が恥かしかったです。わかってくれている人にこそ、もっと気持ち伝えていきたいって、そう思えた大切な出来事でした。
その2日後にあの大地震です。
もし彼女が連絡をくれていなかったら、私は地震のあと、彼女と連絡がつかずに、もっと不安にさせてしまったかもしれません。もしかしたら大事な親友を失ってしまっていたかもしれません。
人のために役に立つことをしたい。困っている人を助けたい。こうした思いの強い人、きっと多いかと思います。私もその1人です。
とても素敵なことです。大切なことです。ですがその前に、まずみなさんの身近にいる大切な人たちに手を差し伸べてあげてみてください。優しい言葉をかけてあげてください。連絡をとってみてください。顔を見に行ってきてください。
自分を大事にしてくれている人を大事に出来ない人に、新しく出会う人に与えるものなど何もありません。身の回りのことをちゃんとできてこそ、次にいける。人と人との関係も整理整頓と同じなのです。見て見ないふりをしたり、逃げてばかりでは、ほんとうに大事なものと一生出会うことなどできません。
大事な引き出しは鍵をかけっぱなしでは意味ありません。時々鍵をあけ、新鮮な空気を入れてあげないと、素敵な関係も自然と錆付いていきます。
未曾有の災害を通して、人間はまた新たな知恵を得られたように思います。そしてこの経験をまた次の世代へと引き継いでいくことで、私たちがしてきた努力が生きてくるのではないでしょうか。
もう少し事態が落ち着いてきたら、私は大切な人に会いにいきたいと思っています。そして「いつもありがとう」って直接顔を見て言いたいです。
たとえ電気の灯りが消えてしまっても、互いに信頼しあう間柄なら、心と心とで灯りがついているはずです。それはとても心強く、どんな明るい電球よりも眩しいほど元気をくれるものではないでしょうか。
色のひととは、光のひとでもあります。電気以外の灯りというものを、みなさまには是非知ってもらえたらとここに思いを綴ってみました。
お役にたてれば幸いです。