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色のひと(R)として

色分析を決して侮ってはいけない。
色を専門的に触れるようになってカレコレ長い年月が経ちました。もしかしたら色のスペシャリストとしてはそこそこになってきているかもしれません。
でも私にとって色を見る、色を付ける、色を比較する、色を分析する、色を組み合わせる、といった「色を扱う行為」については、それがたとえ小さなことであっても、お仕事ではなくプライベートなことであっても、決して適当に答えたりすることはありません。どんな時も、いつだって真剣です。
なぜならば、色のひととして語る以上、色に対してプロと見なされるわけですしその責任がのしかかります。また色は、みなさんが思っている以上にとても複雑で、いつまでも正解のない不思議なものだからです。
幼い頃に与えられる12色のクレヨンや色鉛筆だけが色ではありません。
赤も黄色も、沢山の赤があり、黄色があります。
青でも薄いものから濃いもの、中には深くて濁ったものや、鮮やかで透明感のあるものなど、1つ1つ特徴の違うものばかりです。
同じ色をいくつも作ろうと思うとそれはそれは大変なことなのです。どんなに原料となる分量が決まっていたとしても、恐らく目には見えないレベルかもしれませんが、どこかしら微妙に違ってきてしまう…これが色の奥深さなのです。
色はつくる人が違えば違うものができます。
色はつくる環境が違えば違うものが生まれます。
色は何に塗るかでも違ってきます。
そして
色は10人いれば10通りの色が生まれてしまいます。
恐ろしいことですが、これが色の実態です。
人間が色をつくるには限界があると私は思っています。
だから他人に100%を求めようと思ってもそれはとても難しいことです。ですが1%でも理想に近づけられるようにすることは可能です。そのために今では色見本というものが多数存在するようになりました(DICやPANTONEなどです)。
でも実際この色見本が存在しても、色は微妙にずれてきます。これが印刷の難しいところです。
昨日装丁や付録の三回目の色校正が終了しました。これで全て終了です。あとは本になるのを待つだけです。
今回は本当に大変でした。正直まだ終わった気がしていません。どこかドキドキしています。
色のひととして、色のスペシャリストとして、色を本にするというのはものすごい責任です。皆さんが私を信頼してくださるからこそ責任感が高まります。
でも印刷には限界があります。紙の質もあれば、作る人も毎回違います。どんなにこちらがこの色に!と思っても、その日の気温や湿度によってもインクの色は変わってくることでしょう。なのでこちらの妥協点も必ず必要です。
改めて色を印刷することの難しさを実感しました。
今回は特色を使ったりもしたので色々と大変でした。本の色付けは1枚に付けるだけはないから大変なんですね。左のページを変えたら右のページも色が一緒に変わってしまうのです。4枚が1セットになっているので、1つ動かせば他の部分にも影響が及ぼすというわけです。あとは印刷屋さんの腕に頼るしかありません。
私も最後の最後まで諦めずに編集者の方に意向を伝え続けました。お陰でだいぶ理想に近づけることが出来ました。
印刷所の方、そして私の拘りにお付き合いくださった編集者さん、デザイナーさん、本当にありがとうございました。そして遠くから応援してくださっている皆さんに心から感謝しています。
きっとここで努力したこと、最後の最後まで諦めなかった気持ちは、本を見て頂けたら伝わるのではないか?そう信じています。
ですがみなさんにも是非紙に出す色というのは100%ではない!ということをどこかで思っておいていただけたら幸いです。
きっとカーテンの色や壁の色などでサンプルと実際とで色が違った!などと経験はあると思います。でもこれは致し方ないことなのです。このことをどうか知っておいて頂けたら色屋としては大変有り難いです。
そして今日はもう1つお伝えしたいことがあります。
最近、色を仕事にする人が増えてきています。私のところにも色々と問い合わせがあります。
ですが色を仕事にする人が増えることに、私は少々疑問を感じます。なぜならば安易にできる仕事ではなく、とても難しい仕事だからです。
正直、なるための国家試験があるわけでもありません。だからこそ本物だと認める証がありません。検定を1級とっていようと、海外の資格を持っていようと、それはあくまでもスタートするためのチケットを手にしたというだけで、プロとして認められたわけではありません。
資格というのは、あくまできっかけであり、仕事をするためのツールでも何ものでもない、そう思います。ここからが勝負です。ここからがその人がその道のプロとして進んでいけるか、です。
私も山のように勉強してきました。色は勿論、スタイル、そしてイメージ、他にもインテリアやフード関連、心理関係などなど。ですがそれを掲げようとはこれっぽちも思いません。
本物になるためには資格だけではどうにもなりません。その人の努力と経験を土台に、認めてもらえるためのブランド力やちょっとした運やセンスも必要でしょう。お金では買えないありとあらゆるものが必要となってきます。
私は「色のひと」という商標登録をしています。
今ではこの肩書だけで色の仕事だけでなく、料理の仕事からインテリアの仕事まで頂いています。ここまでくるのにものすごい年月と努力をしてきました。
色のひとという肩書きはとても重たいです。「色屋としての責任を背負います!」と言っているようなものです。
でもそれだけ自信があります。色を見て、比較して、感じて、分析して、組み合わせる。こうした色を扱うことにプロとして自信を持っています。
みなさんにも是非色がとても難しいということを知ってもらいたいなって思います。
昨日も過去に色診断を7回も受けたことがある、という方が私のところに相談にやってきました。とても残念でした。弁護士バッチではありませんが、色バッチを作りたい、作らなくてはいけないのかな?そんな気持ちにさえもなりました。
ただ今できることは、バッチを作ることよりも、私を信頼して依頼してくださったお客さまからのお仕事を立派に成し遂げる、当たり前のことですが、これがやはり大事なのかなって思います。
今、色のことを勉強している方がいたら、是非、色を仕事にしようなんて最初から思うことをお休みしましょう。
色は仕事にするものではなく、本来なら生活を豊かにする、潤いのあるものにするための道具だからです。色の大切さを心底知ったら、まずはそれを存分にあなた自身が味わうことから始めることです。自分自身が存分に遊べるようになって始めて分析する権利が与えられると思います。
ただ、分析する、組み合わせる力というのは、並大抵のことではありません。何度も言いますが、スクールに通ったから、資格をとったからできるものではありません。その人のセンスもありますし、その人の努力も欠かせません。
色というのは人を「+」にもしてくれるし時には「−」にもしてしまう”天国と地獄”の両面を持つものだということを、しっかり心得ていただけたら嬉しいです。
ということでなんだか熱く語ってしまいましたが、色ってほ〜んと難しい!!!
昨日までの色校正で頭をフルフルに使ったせいか、今日はお昼まで寝てしまいました。よっぽど頭を駆使していたんだと思います。
ちなみによっぽど色を見たくなかったせいか、今日は1日ブラックマンでした(笑)。
装丁の色はこの春のトレンドをしっかり読み、さらにはいままでにない色合わせを実現しています。
手に取る時には、珍しい色みだけれどどこかで見たことがあるような?そんな気分になるかと思います。理由は見たらきっとわかります。
楽しみにしていてくださいね!


nanae

One Comment

  1. 学生のころ自費出版で本を作ったことがありますが、
    実際に自分が描いた絵と印刷されてきた絵の色の違いに驚いた記憶があります。
    私の「自分色」であるsummerのような、やわらかい色は特に印刷には出なくて、でも自分では大好きな色なのに!
    って、あれはくやしかったなあ…
    今でも本屋さんの本を見て「ああこれ、ピンクが蛍光になっているから、全体の色がなんかしっくりこない…」
    と思ったりします。
    印刷の色がすべてではないことを認識しつつ、
    新刊、楽しみにしています!
    もう既に予約済みなので、後は家に届くのを待つのみです。
    本当にたのしみ~!

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